チェチェンの現在を語る

「チェチェン共和国」をご存知でしょうか?
ロシア南部に位置し、91年にソ連が崩壊したとき独立を宣言しましたが、
ロシア政府は武力侵攻を開始しました。

モスクワ劇場占拠事件や、北オセチアの学校占拠事件などから
「チェチェン人=テロリスト」というイメージが強いのでは
ないでしょうか?

チェチェ人でありながら、ロシア人、チェチェン人の区別なく
人命救助にあたっている外科医ハッサン・バイエフがいます。
今回彼を日本に呼んで講演をする予定でしたが、
ビザが下りず、来日が叶いませんでした

しかし、バイエフ医師と親交のあるNGO関係者や
ジャーナリストが、代わって講演を行いました
(主催:チェチェン連絡会議)

ロシア(ソ連)は何も、最初からチェチェンを標的にして
戦争をけしかけたわけじゃないんです。
400年前からロシアは徐々に領土拡大(南下)しはじめ、
コーカサスの抵抗にあいます。
そしてチェチェンは、「油田と石油のパイプライン」として
重要な地理にありました。

ソ連は15の構成共和国と、その他の自治共和国から成っていましたが、
構成共和国は独立できるが、自治共和国はできない、と、
法律で決められていました。
91年に、構成共和国だったウクライナ、ベラルーシ、ロシア(エリツィン)の
共謀によりソ連は崩壊。
しかし自治共和国だったチェチェンは独立が認められませんでした。
ソ連が崩壊した後、チェチェンが独立を求めるのは自然な流れです。
しかしロシアは油田のパイプラインを握るチェチェンを
手放したくありません。
他の国々はそんなロシアの横暴に対して何も言えずにいます。
ロシアがUNの常任理事国であるということが大きいでしょうし、
アジアとイスラムに対する蔑視もあるのでしょう。

そして国民からも、チェチェンに武力行使することを反対する声は
あがりません。
それはプーチンが報道規制をして、国民を洗脳しているのと、
特に「9.11」以降、「チェチェン=テロリスト」に持っていき、
それが成功しているからです。
ロシアのNGOは登録制で、厳しくチェックされてるため、
人道支援をしているNGOも、声を上げるのが難しい状況です。

ちなみにチェチェンが使っている武器は、
そもそもロシアが与えたモノなんです。
グルジア共和国で起きた、「アブハジア紛争」を解決したいロシアは、
チェチェン人を訓練し、武器も与え、アブアジア紛争に投入。
その後、「飼い犬に手を噛まれる」という状況に。
紛争って、「どっちが悪い」とか「どちらに原因がある」とか
そんな風に簡単に片付けられないんですよね。

ところで
第二次チェチェン戦争以来、
毎週木曜日にモスクワのプーシキン広場で、
反戦集会が行われています。
その数は徐々に増えているそうです。
実は、ロシアと強く戦い、独立を勝ち取った国ほど、
その後、リベラルな政権ができる、という傾向にあります。
ロシアは、そういう点に置いては寛容だと言われています。
その例が、バルト三国やハンガリーです。
こんなにも粘り強く戦っているチェチェンに独立後、
しっかりとした政党を作る光が見えてきている・・・・
と、思いたいですね。
(しかしバルトやハンガリーは、「キリスト教」で「欧州」なので
世論が味方した、とも言えますがね・・・)

先日、チェチェンの司令官だったバサーエフが亡くなりました。
バサーエフは、「チェチェン最後の指導者」とも言われていますが、
「すでに過去の人」とも言われています。
プーチンの情報戦略が功を奏し、
「チェチェン=テロリスト、ならず者」と言われていますが、
指導者であるバサーエフは、スーフィズム(イスラム教の神秘主義)
であって、ワハビスム(イスラム原理主義)ではないんです。
逆にワハビスムを嫌っていました。
しかし、時代には逆らえません。
徐々に、イスラム過激派がチェチェンに入ってきて、
武器を持って戦う若者が増えてきたのです。

バサーエフがよく言っていたのは、
「ロシアの帝国主義、植民地主義からヨーロッパを守る」
というもの。
「チェチェンを守る」では、ありません。
彼は、自分がヨーロッパの一員であると認識しており、
自国のことだけでなく、ヨーロッパ全体のことを考えていたのです。

バサーエフが亡くなり、今後チェチェンが何処に行くのか、
予測がたちません。
チェチェンの司令官が好き勝手をやってるのと、
ロシアの秘密警察と、チェチェン司令官がどこまで結びついてるのか
わからなくなってきており、本当にチェチェン独立派からの命令なのか
末端で動いてる者にとっては、よく分からない状況です。

確かにチェチェンには、イスラム過激派が入ってきています。
でも、だからといって、みんながテロリストではないんです。
チェチェンの戦火により犠牲になっている人たちは、
外からの支援をほとんど受けることができず、
まともな医療や教育が受けられない状況です。
HIV/AIDSの感染も増えています。
地雷によって命を落とし、ロシアが枯葉剤を散布したことで、
小児ガンや小児白血病、先天性疾患も増加しています。
乳幼児死亡率も、とても高いです。
自殺やPTSDも増加しています。

チェチェンの状況を知ってください。
チェチェンには、私たちと同じように、
平和な生活を望んでいる人たちがいるのです。

参考に・・・
チェチェンの子どもを支援する会

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