日本パレスチナ医療協会で、
パレスチナ 占領と人間
—「共生」 絶対零度のトポスから—
というテーマで公開講座が開かれた。
先日、「イスラエル人入植地のガザ撤退」という出来事があり、
メディアは、こぞって報道した。
それまでカザにメディアは入れなかったが、
シャロンはガザにプレスセンターを作り、外国人を招きいれた。
では、ガザでの出来事が全て報道されるようになったのだろうか?
テレビや新聞では、「我が家」から強制的に引き離される
イスラエル人住民たちの苦しみや悲しみが強調されて報道されていた。
しかし、イスラエルは彼らのその後のフォローをきちんと行っているので
彼らが路頭に迷うことはない。
それよりも、報道されるべきなのに報道されていないことがある。
それは、ガザ地区のラファでイスラエル軍が組織的に、
ブルドーザーでパレスチナ人の家屋破壊を行っている、という事だ。
彼らは、家を失ったら路頭に迷う。
彼らの生活を補償してくれる人はいない。
ガザの現状を如実に表した言葉がある。
「ガザに未来はない」
国際的占領地であるにも関わらず、あえて入植したのはなぜなのか?
1、宗教的理由・・・「神に約束された地」
2、経済的理由・・・イスラエル国内では充分な生活が送れなくても、
ガザでなら豊かな生活が送れる、と夢や希望を抱いて
ガザに移った、イスラエル社会で貧しい人たち。
これは、日本人が満州に移ったのと似てないか?
日本はその後、植民地→戦争となっていく。
日本とイスラエルは似たような歴史を負っている。
そのことからも、私たち日本人はもっとパレスチナ・イスラエル問題に
関心を示してもよいと思う。
しかし、そこには「共感の非対称性」が存在する。
例えば、スマトラ沖地震やパキスタン地震の
犠牲者・被災者に対する無条件の共感。
日本は地震が多い国なので、なお更だろう。
ホロコーストの犠牲者に対する人間的共感。
だが・・・
パレスチナ人の歴史的・日常的苦難に対する無関心。
この無関心は何に由来するのか?
1、人為的暴力が原因だから→私たちには無関係
彼らに原因がある といった態度。
2、報道の日常化→報道する側も受ける側も惰性により感性が鈍っている。
そして大きな問題なのが、
パレスチナ人の人間的な部分を表現している作品や芸術がない、ということだ。
例えば、ユダヤ人に関しては、
「アンネの日記」「シンドラーのリスト」「戦場のピアニスト」など、
世界的に供給され共感されている。
しかし、パレスチナにとってのそれは存在しない。
あったとしても広く流布されていない。
興味深い書籍がある。
1、「パレスチナから報告します 占領地の住民となって」
アミラ・ハス著・くぼたのぞみ訳・筑摩書房
2、「ホロコーストとともに生きる ホロコーストサバイバーの子どもの旅路」
サラ・ロイ著・岡真理訳・みすず書房
そして、
「アルナの子どもたち」
という映画は、パレスチナの人たちを人間味に溢れて描いており(ドキュメンタリー)、
テロリストは、元々は私たちと同じ、平和を望む人間なんだ、と
人間化している。
ちなみに私は、「アルナの子どもたち」の映画についてブログで書いている。
詳細はコチラ。←2005年11月26日の記事
パレスチナ人は、繰り返し自爆テロを行っている。
世界中から非難を浴びても続けている。
しかし、パレスチナ人たちが罪のない人々を好んで殺しているわけではないと
世界は理解するべきだろう。
問題の根源は、イスラエルの占領にある。
「占領」という状況が彼らを自爆テロに追いやっているのだ。
よく、「暴力の連鎖」「暴力の悪循環」の一言で片付けられてしまうが、
本当に暴力の連鎖なのだろうか?
どちらも暴力だからといって一緒にしていいのだろうか?
「パレスチナ ジェニンの人々は語る」(岩波ブックレット)の著書である
土井敏邦さんは、こういっている。
占領は、土地の没収、経済の従属化など産業基盤破壊・生活基盤破壊、
移動の自由・表現の自由・教育の権利など基本的人権を剥奪する、
「構造的な暴力」である。
占領下で生きる人々は、人間としての尊厳を奪われてしまう。
パレスチナ人たちの「占領」との戦いは、「人間らしく生きていく権利」
「人間としての尊厳」を取り戻すための戦いである。
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先日、嬉しいニュースがありました。
イスラエル兵に殺され、脳死状態になった息子の臓器を、イスラエル人に
移植することを決めた、パレスチナ人の両親の話です。
この父親は昔、イスラエルで働いていたことがあり、
人間的なイスラエル人が存在することを知っていました。
私たちは、肌を触れ合ってこそ分かり合えるのです。
分かり合えないとしても、近づくことはできます。
パレスチナの分離壁は人間の交流を妨げるため、
ますます両者の間に緊張感が走ると思われます。
イスラエル人は国家に植え付けられた強迫観念に囚われています。
世界は、そのことに理解を示されなければなりません。
「ユダヤ人は普遍的に迫害される・・・またホロコーストが起こるかもしれない・・・」
私たちは一般的にパレスチナ人に同調しがちですが、
そのことが、ユダヤ人を孤立させているのだと思います。
ユダヤ人の心を解きほぐして受け入れる関係を築かなければならないと思います。
正義があって本当の平和、民族の共生があるのです。