橘ジュンさんの講演会『言葉にできない生きづらさに寄り添う』に参加してきました。

私が橘ジュンさんを知った経緯

NPO法人東京自殺防止センター主催のこの講演会。講師はNPO法人BONDプロジェクト代表の橘ジュンさんでした。

数年前、渋谷・円山町のど真ん中に、カフェ兼女の子たちが寝泊まりできる場所(女性専用のネットカフェ「MELT」)を作っていた橘さん。私はそれまで橘さんの事を全く知らなくて、お友だちの藤原さん(NPO法人ライトハウスの代表)に「国井さんに紹介したい人がいる。連れて行きたい場所がある。」と言われて連れていかれたのが1回目。その時お店に橘さんはいらっしゃらなくて、たまたまお店にいたパートナーのKENさんと名刺交換をしました。お茶をしながら藤原さんから橘さんの活動をいろいろ聞いて、そこで初めてそういう方がいるって事を知ったんです。

その後、私は夫を連れてランチしに行き、ご飯も美味しくて「また来たいね~」って言ってたんだけどその日が最後でした。というもの、閉店してしまったんです。資金繰りが大変だったのかなあ~と、残念に思ったことを覚えています。

その頃から、一度橘さんのお話を聞いてみたいと思ってたんだけど、なかなかそんな機会がなくて、今回ようやくお話を聞く機会に恵まれました!!

橘さんの台詞にガツンとやられました。重かった・・・

講演会の冒頭約20分、今年の2月にNHK「プロフェッショナル」で放送された一部を観ました。映像の中で橘さんが言っていて、講演会でも度々口にしていた台詞が『“生きようとする力”を信じる』。うーん、、、今の私には、とっても重くて、真実味のある台詞です。それって、私がやってる活動の根幹でもあるよなあ~。自分の信念や軸を言葉にするって案外難しくて、感覚で動いてるから普段改めて考えることがないんだよね。でも、それを言葉にすると、まさにそれですよ!!!

橘さんがBONDプロジェクトを設立するまでの道のり。1つのケースを紹介

若い頃はいろいろあったという橘さん。18歳で訪れた転機は取材を受けたこと。自分の話を聞いてくれたことに感動し、そこから橘さんもライターになることを志したそうです。渋谷や新宿で気になる少女たちに声をかけて、一緒にご飯を食べたり自宅に泊めたりして、そこで聞いた話をフリーペーパーにまとめる活動をはじめました。

そんな中で出逢った16歳の少女。彼女は妊娠しながら夜の仕事をしてて、「今までの子たちのように、ご飯食べさせたり泊まらせたりするだけじゃダメだ・・・」と、福祉で働いてる友人に相談。そうして行政につないだんだけど、でも結局その少女は行政に相談しないわけですよ。夜働いて昼間寝てる生活だから、役所がやってる間に行くことが出来ない・・・というか根底に「相談したって私の話なんか聞いてくれるわけがない」「お説教されるだけ」という思いがあったんでしょうね。で、最終的には未受診の駆け込み出産だったとのこと。そんな事を目の当たりにして、「女の子たちの声と関連機関を結びつける“通訳”になる」と思い立ったそうです。

東京のネットカフェに泊まろうとした高校生のケース

数時間かけて夜の渋谷に出てきた高校生の女子2人組。橘さんが声をかけると「ネットカフェに泊まろうと思ってた」って。そこですかさず橘さん「東京は厳しくなってるから22時以降は身分証明書を求められるよ。高校生は利用出来ないよ。」「うちの事務所に泊まる?」と。ここまでが『プロフェッショナル』からの抜粋。

けど、神奈川はまだ甘いところがあって、未成年でも泊まれるネットカフェがあるそうです。夜泊まるところがないと、下心アリアリの男どもに声をかけられて・・・というパターンに繋がることが往々にしてあるので、このように早めにキャッチして防げるのが理想です。

出会い系で男の車に乗って、自分の居場所が分からないケース

えっ!?そんなことがあるの!?Googleマップですぐに分かるじゃん?と思うのは、スマホを持ってる今の話。

16歳の少女が家族との折り合いが悪くて家出。出会い系で知り合った男と駅で待ち合わせして、そのままその男の車で男の自宅へ。そしたら援助交際を強要されて、「したくないけどするしかない。でもしたくない!!」と橘さんに電話で相談。「今、迎えに行くから!どこにいるの?」と橘さんが聞くと、「自分の居場所がわからない。車で来たから」って。。。

男は仕事に行ってしまって、今家に誰もいないとのこと。男の郵便物を探して住所を知らせるように言うと、郵便物が1つも見当たらない。じゃあ、外に出て近くのコンビニやお店に入って住所を確認するように、と。そして橘さんが迎えに行くと、その少女の自宅から2県またいだ先に連れてこられてたそうです。

このケースはその後、児童相談所につないで自立援助ホームで暮らすことになり、うまく関連機関が活用できたケースでした。

15歳の高校生に勉強を教えることもあります

お母さんと2人暮らしの少女。週に数回お母さんの彼氏がウチに来ると自分の居場所がなくなり、家にいたくない。そうすると家で勉強することもできない。そんな少女に「事務所に遊びに来る?事務所で勉強したら?」と声をかけると、とっても喜んだそうです。で、スタッフの方が勉強を教えてるとのこと。もちろん夜には帰らなきゃいけないけど、そういう場所があるって、その子の支えになると思います。

偏食が多い子どもたち

BONDプロジェクトで保護した少女たちは親からネグレクトを受けている子たちが多く、偏食が多いそうです。そして見たことのない料理が多い。本当は栄養のことを考えるといろんなモノを食べてもらいたけど、でも残されるよりは・・・と、結局少女たちの好きなものを作ることが多いそうです。

ある時。
がんもどきの煮物を作ったら、もの凄っ不審そうな目で遠くから見ていた子がいたっ、て(笑)そっか・・・がんも、見たことなかったんだね。食べると美味しいんだけどね、その後食べたのかな(笑)??

自らSOSが出せる子と出せない子の違い

それは過去に、「相談をして解決した経験」が有るか無いかによる、と橘さんは言っていました。いい大人にちゃんと出会って話を聞いてもらうって、凄く大事。でも、ただ話を聞くだけじゃダメで、ちゃんと一緒に向き合って解決するまで寄り添ってくれていることが、重要だと思います。本来は親がそうあるべきだと思うんだけど、親がその役割を放棄しちゃってるんだったら、親以外の大人でも全然アリだと思う。

橘さんは「葛藤に寄り添う」と表現していました。

少女たちを保護すると、親から迷惑がられることも多々あります

これは、容易に想像ができます。自分たちが虐待していることを全く気がつかない大人の、よくある反応ですよね。

橘さんが、保護した少女の親から言われた台詞

「あなたが余計なことをするから、家族がバラバラになった」
その原因を作ったのはあなたでしょ?と、突っ込みたくなりますね。

息子が性的虐待をした事実を認めない祖父母

この親にしてこの息子あり、という感じでしょうか。実の父親から性的虐待を受けていた少女。「お前を愛しているからこういうことをするんだよ。でも誰にも言っちゃダメだよ」と言われて、それが普通の父娘関係だと思っていました。そのうち友だちと、彼氏の話やセックスの話をするようになって、自分が父親にされていることが異常だと初めて気がつきます。

でも、「私が悪いから、こんなことされているんだ」「お母さんや兄弟が傷付くから、自分が黙っていれば良いことなんだ」と沈黙を通します。そんな中、橘さんと出会い、少女が警察の介入を望んだことで、性的虐待の事実が明るみになります。その後少女は父方の祖父母に預けられたのですが、その祖父母にとっていくら孫が可愛いとはいえ、結局は息子の味方。

「お父さんは本当にそんなことをしたの?」「そんなこと言っちゃダメじゃない」と少女を責めるようになります。ここでも居場所がなくなった少女。「やっぱり、家庭に私の居場所はないんだ・・・」って。

BONDプロジェクトの今の活動

私の中で、「橘ジュンさん」「BONDプロジェクト」と言えば、渋谷のネットカフェ時代で時が止まったままでした。そして今回初めてお話を聞くことで、その「止まっていた時」が動き始めたのです。活動の幅を広げ、スタッフを増やし、いろんなケースを解決して、、、、更に分厚い壁にぶつかりながらも、それを乗り越えていく力強さを感じました☆

2017年7月にBONDの家をオープンしました

『BONDの家』は一軒家で2-3人が暮らすことができます。スタッフもそこで一緒に暮らして、少女たちの自立を促すことが目的です。そこから学校や仕事に通い、月3万円を生活費として入れます。自立援助ホームではなさそうだけど、それに近いことをしているんだと思います。この話を聞いたとき、以前渋谷の円山町にあった女性専用ネットカフェが、うまく、より良い形で変化したんだなあ~と感じました。

未成年の保護は法的に問題がないのか?

これは会場から出た質問です。私も橘さんの話を聞いていてずっと疑問に感じていたことでした。親が「うちの子どもが誘拐された!」と言ってきたら、誘拐罪になるわけですよね。

そしたら、橘さんも「そうなんです!!!!」と。その一言で、そこはやっぱり、1番慎重になっている部分なんだと感じました。保護しようとした少女が未成年だった場合、まず最初に弁護士に電話をかけて相談するそうです。そしてそのケースの経緯を伝え、保護しても法的に問題がないか確認をする。もちろん、その少女とのやり取りはちゃんと記録に残します。口頭だけの意思確認では、のちのち「言った・言わない」の世界になる可能性がありますもんね。そして、子どもを放置している親にかぎって、「誘拐罪で訴える!」と言ってくる可能性があるので、そこは慎重にならざるを得ません。

橘さんの心の拠り所となるもの

「仲間」
と言っていました。途中、質疑応答の時間から、スタッフの水野さんというかたが登壇したのですが、凄く遣り手な方だとお見受けしました!カリスマ性があるのは橘さんですが、話の上手さや事務を取り仕切るのがうまいのは水野さんでしょうね。他にもスタッフが数名いるそうですが、そういう仲間がいるから辛くても落ち込みきらずに頑張れるんだと思います。到底1人ではできない活動です。熱意だけあっても継続できないでしょう。そして水野さんも「支えとなるものは“仲間”です」と言っていました。

少女たちとの距離が近くなりすぎると、心配しすぎてしまってついついキツいことを言ってしまう橘さん。「言い過ぎた・・・」と反省するそうですが、また言ってしまう。そんな時、すかさず他のスタッフがフォローしてくれるとのこと。アメとムチの使い分けですね。そして少女たちの中には、「橘さんには話しづらいけど、○○さん(他のスタッフ)には話しをする」というケースも多々あるとのこと。人間、相性がありますからね。当然そういうこともあると思います。だからこそ、信頼できる仲間とチームで活動することが大切なんだと思います。

さて、と。
私は何ができるかな。
また、悶々と考える日が続きそうです。
→で、実際の活動に結びつけます☆

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