タイの少数民族の人たちがいろんな困難を
抱えていることは、先にも話しましたが、
その根源は、「国籍(ID)がない」ということです。
国籍がなく、出生届けがなく、戸籍がない。
タイは、IDチェックがとても厳しい国です。
IDを持っていないと、国内を自由に移動できません。
教育も受けられず、奨学金ももらえず、
各種免許の取得も無理です。
充分な医療も受けられません。
ちきんとした所では仕事もできません。
mirrorには、「市民権獲得プロジェクト」があります。
自由に移動ができない少数民族のために、
ID獲得に必要な申請書類を集め、申請を代行します。
そのため、今ではIDを所持している少数民族も増えてはきています。
ちなみに、タイの少数民族は北部だけではありません。
南部には、「海の民」という少数民族が5種族います。
陸上生活をしている場合もありますが、主に船上での生活です。
2004年のスマトラ沖地震の津波の被害が一番大きかったのは
パンガー県ですが、亡くなった人の多くはタイ人で、海の民の人たちは
ほとんど亡くならなかったそうです。
このことは、一部マスコミでも報道されていましたが、
タイではそれまで津波が起きたことがなかったので、
海の民でも津波を見たことがなかったのですが、祖先からの言い伝えで、
「海が引いた時は、高台に逃げろ」というのがあったそうです。
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北部少数民族は、麻薬と切っても切れない関係が続いています。
いまだに、村全体が麻薬に溺れている所もあります。
数年前、タイのタクシン首相は「麻薬撲滅戦争」と称して、
対外的な麻薬撲滅のアプローチを行いました。
タイ社会の中で、麻薬による甘い汁をすすっているのは、
上層部の人たちです。
麻薬と警察の癒着もあります。
しかし、「撲滅戦争」で検挙され、死刑にされたのは、
少数民族やドラッグのバイヤーたちばかり。
ピラミッドの底辺の人たちばかりをどんなに多く捕まえても、
麻薬による利益を得ている人たちを捕まえなければ、
何の解決にもなりません。
今、タイではケシの栽培が行われていないことになっています。
時々、「ケシの栽培が行われていた」というニュースが流れるそうですが、
タイの人たちにしてみれば、
「えっ?まだやってたの?」という感覚らいしです。
タイ北部には、ケシの栽培が行われないように監視している人たちが
存在します。
また、北部で栽培しようとすると、森林を大規模に伐採しなければならず、
上空から一発でバレてしまうので、
そう簡単には栽培できなくなっているそうです。
ではどこから麻薬が入ってくるか。
それは、ビルマからです。
ビルマとタイの国境は緩やかで、フェンスが張られてるところも
ありますが、きちんとした監視体制はありません。
なので、夜な夜なビルマから不法入国が行われています。
ビルマ(ミャンマー)の軍事政権の資金源は麻薬でもあるので、
ビルマ側が麻薬の厳しい取締りを行うことはないでしょう。
ちなみに、少数民族が使用したり売買したりする麻薬、
ビルマ側から入ってくる麻薬は、
MDMA、いわゆる、「エクスタシー」だそうです。
mirrorのサクラさんがこんなことを言っていました。
「タイから、少数民族に対する差別はなくならないと思います。
でも、どんなに差別されても、自分たちの文化を誇りに思う、
強い心を養うような教育のサポートを行っていきたい。」
私も同感です。
それが、麻薬撲滅にもつながるのだと思います。
地道で時間のかかる支援ですが、
確実に実を結ぶやり方だと、私は思います。