ロッブリーという遺跡の街から約7キロ。
エイズホスピスになっているお寺があります
真っ白い壁、清潔そうな、広い建物の中に、
33床のベッドが並べられ、
思い思いのままに、患者さんが過ごしています
エイズホスピスというと、暗くてどよ~んとした雰囲気を
想像していたのに、まったく違うんです
ベッドの上で座っている人
動けず点滴をしている人。
他の患者さんの世話をしている人。
元気に散歩をしている人
まず出勤すると、
シーツと枕カバーの交換をします。
そしてベッドまわりの整理整頓
昼食は11時からで、配膳、食事の介助、片付け
午後は、患者さんの体を拭き、服を着替えさせて、
夕食は16時から
ベッドには1~33まで番号がふってあり、
一人一人に自己紹介しながら、
自分のメモ帳に、番号と患者さんの名前を書き、覚えていきます
患者でありながら、
元気にここで働き、看護師とは別に、
病棟を取り仕切ってる女性がいました
毎日元気にクルクル働いていて、
彼女とはすぐに意気投合
私は彼女と多くの時間を過ごしました
ご飯を食べ、お茶をし、一緒に昼寝をし・・・
お互いプライベートの話はほとんどしなかったけど、
私はいつも彼女から「一生懸命生きること」を教わりました
すでに発症していながらも、他の患者さんを親身に介護しており、
「大丈夫?」「疲れてない?」と、いつも私を気にかけてくれていたのです。
患者さんの体を拭いているとき、
彼の首に、美しい仏陀のペンダントがかかっているのに気がつきました
「これキレイね」
「うん、天国に行けるように祈ってるんだ」と、
両手を合わせて微笑む彼。
点滴をしていて、自力では動けず、食事もできない女性。
オムツ交換をし、水を飲ませてあげると、
「ありがとう」と嬉しそうに微笑む彼女。
ここに入院しているティーンエイジャーの女の子たち
太陽のような笑顔を見せ、
「あなた日本人?どこに住んでるの?名前は?」と興味津々
食事を食べ終わるのが一番遅いおばあちゃん
みんなの食器を片付け終わっても、
一人マイペースで黙々と食べています
「これじゃあ、片づけが終わらないわ」と、
しびれを切らした職員が食器を取りあげるまで
美味しそうに食べています
そんな中で、患者さんたちにのんびりマッサージ
私は日本語で話しかけ、患者さんはタイ語で答え、
患者さんはタイ語で話しかけ、私は日本語で答えます。
それでもなぜか話が通じ、お互い笑っているから不思議です
「あの子に、車椅子で散歩に連れて行ってもらいたいの」
「患者さんが、あなたと散歩に行きたいんだって」
私はまだ来たばかりで、日本語しか話せないし、
何か特別なことができるわけじゃないのに、
私のこと信頼してくれてるんだなあと、すごくすごく嬉しかったんです
ここに来てよかったと、心の底から思いました
ここはとても、生(せい)のパワーに溢れています
自分が背負っているものをまわりに感じさせないくらいの、
笑顔と明るさ、そして生きる力を感じるのです。
でもそれは、彼らが自分の死を受け入れているからでしょう。
受け入れるまでには、想像を絶する葛藤があったと思います。
それでも最後まで一生懸命生きることを選らんだ彼ら
ここにいると、「自分も一生懸命に生きなければ」と、
思わずにはいられません。
ロッブリーは猿で有名。