タイの医療政策はコロコロと変わります。
また、タイの人たちは「医療保険」に対する関心が低く、
社会保険制度があるにも関わらず、加入していない人も多いそうです。
山岳民族の村々にも、一応、診療所は存在します。
体調不良時、祈祷師のところに行く人たちもいますが、
西洋医学も広まってはいるので、診療所に行く人たちも多いです。
しかし医療従事者の質は高くなく、モノもないので、
どんな症状を訴えていても、パラセタモンという薬を処方するだけ。
これは頭痛薬です。
タイには「30B(バーツ)診療」というのがあります。
30Bは、約¥100です。
職場と契約している場合(つまり社会保険加入者)は、
誰でも30Bで受診し、薬がもらえます。
しかし、30Bで行える診療内容は限られています。
どんなに高い手術でも30Bで行えるわけではありません。
普通、一般的に、「病院で薬をもらう」というと、アメリカ製の薬は
約6万円、タイ製の薬でさえ¥9000は、かかります。
ちなみにタイの大卒の初任給は¥20000くらいだそうです。
タイ政府が「30B診療」を開始したとき、その恩恵を受けていたのは
低所得者だけでした。
中産階級という微妙な立場の人たちは、普通に病院に行くと、
数万Bかかります。何故なら中産階級は「30B診療、適応外」だったからです。
そのため、借金しながら病院に通う中産階級者たちが増え始めたのです。
その問題を解消するために、中産階級の人たちでも「30B診療」が
受けられるようになりました。
では、ほとんどのタイ人が「30B診療」を活用しているかと思いきや、
どうやらそうではない様子。
「30B診療」を受けるには、自分の住民票を、今現在、自分が住んでいるところに
移さないといけないそうです。
多くのタイ人は、実家から離れ、都市部で働いています。
しかし、多くのタイ人はそれが面倒で、住民票を移さないため、
「30B診療」を受けていません。
先にも述べましたが、社会保険制度に対する意識が低いようです。
そして、「30B診療」を受けるときにもっとも重要なことが、
IDを所持しているかどうか、ということです。
つまり、ID(国籍)がなければ、「30B診療」は受けられないのです。
しかし、山岳民族の人たちに、よくよく話を聞いてみると、
IDを持っていないのに、かつて「30B診療」を受けていた人がいました。
数年前タイ政府は、IDがなくても、「山岳民族カード」や「移民カード」を
もっている人たちに、「30B診療」を受けさせていました。
何故なら、とりあえず、「山岳民族カード」や「移民カード」には
番号が振ってあるので、それを、ID番号と同等と、見なしていたわけです。
しかし、そのせいで、国の医療費はパンク寸前。予算オーバー。
その打開策として、国籍IDを持っていない人たちの
「30B診療」カードを回収し始めたのです。
ちなみに、「30B診療」で、HIV/AIDSの診療も受けられます。
しかし、抗レトロウィルス薬に関しては、あいまいで、
もらえる人もいれば、もらえない人もいるそうです。