あるヤジディ教徒の思い~マルチシムー二教会クリニックでのIDPに対する医療支援

ヤジディ教徒ご夫妻の場合

午前中は、ゼイリーン地区に住んでいるヤジディ教徒の難民の方々を訪問しました。約1200人の方がこちらで生活をしています。
出発前には、ショートミーティングで事前情報を共有します。

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今回私たちが訪問したのは、80歳男性、72歳女性のご夫婦です。お2人はモスルのバ-シカに住んでいました。同じバーシカに住んでいた息子さん一家は、ダーイシュ(IS)がシンジャールに来たという情報を得て、すぐに町をでましたが、ご両親は取り残されてしまったとのこと。

高齢のご両親は、隣人にお世話してもらいながら暮らしていました。隣人とは少数民族シャバクの方で、このご夫婦にとても良くしてくれていたとのことです。シンジャールからバーシカにやってきたダーイシュ(IS)はこのご夫婦にイスラムへの改宗を求め、モスクに行くことも強要しました。

お2人は生きるために仕方なく信仰告白したそうで、ヤジディの人たちがたくさん逃れたシンジャールには、そういう人たちがたくさん存在します。

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妻は、信仰告白について「生きるためなら仕方ないわ」と割り切っており、しかし夫は、もともと精神的にしっかりしていたけれど「信仰告白してからは弱ってしまっている」と息子さんが言っていました。

元々バーシカでは、ムスリム、クリスチャン、ヤジディが仲良く暮らしていました。結婚することは宗教上禁止されているけれど、ともにコミュニティを形成してきました。

しかし今現在、シャバクとスンナ派はヤジディに危害を加える存在のため「一緒に暮らすことはできない」と言っていました。「バーシカで、同じ人たちとなら再び仲良く暮らせるかもしれないけど、他の人たちとは無理でしょう」と。

ゼイリーン地区に暮らす約1200人のヤジディ教徒の方々は、医療へのアクセスが困難で慢性疾患の治療も中断してしまっています。中には、ここまで避難してくる途中で心疾患で亡くなってしまった人も、少なくないと言います。

モバイルクリニックを稼働する時、ここゼイリーン地区もまわるよう、検討が必要だと思います。

プロジェクトの概要

プロジェクトの実施団体→日本チェルノブイリ連帯基金(JCF)
活動地→イラク共和国アルビル県アルビル市アインカワ地区
実施期間→2015年2月~7月

背景

イラク国内では、去年の夏から激化したダーイシュ(IS)の迫害によって、ニナワ県モスル等からクルド自治区に約85万人の方々が逃れてきています。彼らは建設中の建物や空き家、学校、広場そして宗教施設等で生活をしています。その内、約5万人のクリスチャンは、クルド自治区のアインカワ地区(クリスチャンの地区)で暮らしています。

そんな中、同じ国内避難民でありクリスチャンの医師らが、マルチムーニ教会にクリニックを設け、診療活動を行っています。去年の7月から1日約500人近くを診察しているクリニックでは、9月から薬品購入の資金が足りず、医療設備も不十分なため、慢性疾患を抱える方々の継続した治療が困難な状況にあります。

JCFが2009年から行ってきたサポートしてきたイラクの小児科医であるリカァ・アルカザイル医師が、去年の7月にご家族とともに長野県松本市に避難してきました。リカァ医師の友人であり親戚でもある小児科医のナガム医師がマルチシムーニ協会のクリニックの立ち上げと継続した運営に関わっているため、今回JCFがクリニックのサポートを実施することになりました。

事業内容

1.初期診療における投薬指導
2.カルテ作成と管理スタッフの育成
3.医療チームの派遣による医療体制構築支援

IDPとは

国内避難民のこと。「難民」とは異なり、自分の国の中で避難している人々をさします。

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