ダラシャクラン難民キャンプの子どもたち~マルチシムー二教会クリニックでのIDPに対する医療支援

ダラシャクラン難民キャンプとは

北イラクのクルド人自治区・アルビル市郊外にある難民キャンプです。2013年末につくられたシリア人のキャンプで、ざっくりとした人数ですが、現在約8000人が暮らしています。
2014年には約7000人のシリア人がここで生活をしており、うち妊婦さんが約250人。今年2015年は妊婦さんの数が約500人で、去年の2倍です!人数が増えたことで、妊婦さんへのケアがなかなか行き届かないのが問題だと、キャンプの看護師が言っていました。

4月に関わった子どもたち

私が4月にアルビルに渡航した目的は、JCFのプロジェクトの実施のためです。しかし今回の渡航は日本人医師が2名同行していたこともあり、医療ニーズの高い子どもたちを病院につなげないか~という思いで、訪問診療を行いました。

その中で出会った4人の子どもたちをご紹介します♥

シードラ8ヶ月

両親との3人暮らしで、お母さんのラワは23歳。とっても可愛らしい女性です。第1子ということもあって、粉ミルクのあげ方が違っていたり、離乳食はどうしたらいいのか悩んでいました。妊娠8か月で出産し、そこからシードラの体重がなかなか増えず、首がすわらず寝返りができない状態。発達発育は個別性があって当然ですが、心室中隔欠損があるためそのことと関係があるのではないかと、ご両親は心配していました。「ダウン症があるのではないか・・・」とも。

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私が滞在している間にマルチシムーニクリニックのナガム先生(小児科医)につなぐことができたので、ちょっとホッとしました。

シードラ01

シードラは粉ミルクを月に12缶必要としており、「完全ミルクでも、そんなにかからないでしょう!!!」とビックリΣ(゜д゜で、よくよく話を聞いてみると、粉ミルクの作り方を間違えていて、倍の量の粉ミルクを溶かしていたとのことm(_ _)mたぶん、これは氷山の一角でしょう・・・
このことがきっかけで、次回6月の渡航時には粉ミルクを使っているお母さん方に、ミルクの作り方をちょこっとお伝えすることになりました。

「シードラ」とは「天国の門」という意味だそうです。

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ディタージュ1歳

両親と3歳のお姉ちゃんの4人暮らしで、お母さんのラバ27歳。水頭症があり、1歳になりますが軽い支えがあっても坐位保持が困難な状況です。診察した日本人の先生方は「シャントを造らなくて良いのか?」とのことで、ナガム先生につなぎました。

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診察・検査をした結果、現段階ではシャントの必要はなく経過観察で良いとのこと。

生まれたときは、「シマーフ」という名前だったのですが、水頭症だと分かり、病気が良くなるようにと名前を「ディタージュ」に変えたそうです。これってアラブでは一般的な習慣なのかと思いきや、珍しいケースだそうです。

ジャーナ9歳

1歳頃から甲状腺の薬を内服していましたが、シリアが内戦状態になりイラクに逃げることになりました。難民として生活するようになったことで、思うように甲状腺の薬が手に入らず、私たちと出会ったときは内服が中断されていました。そのため、マルチシムーニクリニックにつなぎ、継続して内服できるようにサポートしています。

「難民」になるということは、多くの弊害が起こります。まずは「衣食住」が問題になりますが、抱えてる病気の治療が滞ってしまうのも、大きな問題の1つです。私は看護師として「治療の継続」というサポートができたらと常に思っています。

ファラク8歳

両親と6歳の弟と4人暮らしですが、親戚たちと一緒にイラクに逃げてきました。ファラクは脳性麻痺の女の子で毎日痙攣が10回あり、首の不随意運動もあります。また、現在内服している抗けいれん剤のせいで肝障害が起きているとのこと。ファラクもナガム先生につないで、適切な薬剤が内服できるようにサポートしています。

ファラク01

プロジェクトの概要

プロジェクトの実施団体→日本チェルノブイリ連帯基金(JCF)
活動地→イラク共和国アルビル県アルビル市アインカワ地区
実施期間→2015年2月~7月

背景

イラク国内では、去年の夏から激化したダーイシュ(IS)の迫害によって、ニナワ県モスル等からクルド自治区に約85万人の方々が逃れてきています。彼らは建設中の建物や空き家、学校、広場そして宗教施設等で生活をしています。その内、約5万人のクリスチャンは、クルド自治区のアインカワ地区(クリスチャンの地区)で暮らしています。

そんな中、同じ国内避難民でありクリスチャンの医師らが、マルチムーニ教会にクリニックを設け、診療活動を行っています。去年の7月から1日約500人近くを診察しているクリニックでは、9月から薬品購入の資金が足りず、医療設備も不十分なため、慢性疾患を抱える方々の継続した治療が困難な状況にあります。

JCFが2009年から行ってきたサポートしてきたイラクの小児科医であるリカァ・アルカザイル医師が、去年の7月にご家族とともに長野県松本市に避難してきました。リカァ医師の友人であり親戚でもある小児科医のナガム医師がマルチシムーニ協会のクリニックの立ち上げと継続した運営に関わっているため、今回JCFがクリニックのサポートを実施することになりました。

事業内容

1.初期診療における投薬指導
2.カルテ作成と管理スタッフの育成
3.医療チームの派遣による医療体制構築支援

IDPとは

国内避難民のこと。「難民」とは異なり、自分の国の中で避難している人々をさします。

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