11月3日、川崎のアリエルダイナーで
「パレスチナ・イスラエル問題を語ろう」というイベントが行われました。
このお店はオーガニックカフェであるだけでなく、
「情報の発信基地」として様々なイベントを企画しています。
ここのお店のことは、いつかこのブログでじっくり紹介したいと思っています。
さて、このイベント。
JVCというNGOが、
パレスチナ医療救援協会のドクターと、
人権のための医師団-イスラエルのスタッフを
日本に招きました。
この2つのNGOが協力しあって、パレスチナで医療活動を行っている、
その現状について報告してくれました。
右の写真中央の女性が、「人権のための医師団-イスラエル」のスタッフ、
マスキット・ベンデルさん。
左の写真中央の男性が、「パレスチナ医療救援協会」のドクター、
ジハード・マシャルさん。
マスキットさんの、
「イスラエルの国民が、イスラエル軍と同じ考えだと思って欲しくない。
自宅のたった20キロ先で、苦しんでる人がいるのに、それを放っておくことは
できない。パレスチナの人々の命を守りたいと思っているイスラエル人も
いるのです。パレスチナを救うことは、イスラエルを救うことでもあります」
というセリフは、とても印象深く、私の心に響きました。
2004年以降、イスラエルによる空爆がほとんどなくなったと言われていますが、
実際には、2004年だけで881人の死者を出し、家屋破壊がとても多いのが現状です。
「イスラエル軍は8月にガザ地区から撤退するという」報道が流れました。
それから3ヶ月。
現在はどういう状況になっているのでしょうか。
ヨルダン川西岸地区には、長くて高い壁が建設され、
400箇所以上の検問所(チェクポイント)が設けられており、
道路が封鎖されています。
その壁は、ベルリンの壁より3倍高く、30倍も長いものです。
そして、パレスチナ側の土地に大幅に食い込んで壁を作っているので、
パレスチナの土地は更に縮小されてしまいました。
つまり、多くの農地や水などのライフラインが奪われてしまったのです。
約650kmになると言われている壁ですが、今現在、250kmまで完成しています。
イスラエル側は、壁を作る理由を、
「イスラエル国民の安全を守るため」と言っています。
現在、占領下のパレスチナでは何が起こっているのでしょうか。
(医療の視点で)
まず、人命や人権がランクづけされるとしたら、以下のようになるようです。
最もないがしろにされてる順に、
①パレスチナの人々
②イスラエル国内の労働者
③イスラエル国内の囚人や捕虜
④アラブ系イスラエル人
西岸地区には400以上のチェックポイントがあり、
自由に行き来をすることができません。
地区間の移動には、必ずDCO(イスラエル軍調整事務所)の許可が必要です。
そのため、患者さんは他地区の病院に行くことは困難です。
なぜなら、DCOの許可は、そう簡単にはおりないからです。
医療施設は都市部に集中しており、しかも都市部はチェックポイントが多いため、
移動はとても困難です。
普通なら数分で行ける病院でも、何時間もかけて行く事になります。
救急の時でさえ例外は認められないのです。
占領地区外で受けなければならない医療もあります。
その時の移動が最も困難なのです。
例えば、癌で放射線治療を受けなければならない患者さんがいるとします。
残念ながらパレスチナでは放射線療法は行えません。
そのため、患者さんはマスキットさんのNGOに依頼し、
このNGOは患者さんの代わりに、イスラエル軍と交渉します。
しかし多くの場合、「安全上の問題がある」とのことで、申請は却下されます。
子どもや女性でも認められません。
ちなみに、マスキットさんのNGOへの同種の依頼は、
おもにガザ地区からが多いそうです。
最終手段として、首相や国防省に訴えるのですが、
今まで法に訴えてきたのは約13000件。
このNGOが仲介したものは、全て問題解決しています。
そして、あまりメディアで流れていない情報ですが、
かつて、西岸地区とガザ地区を結ぶ道路が、
たった2週間だけできたことがあります。
パレスチナ自治区の物理的状況がよく分からない方のために、
こちらの地図を参考にどうぞ。
ガザの人が西岸に自由に行くことは、とても重要なことなのです。
西岸のエルサレムには、パレスチナ唯一の医大・アルクッツ大学の医学部
があります。
しかしガザから西岸へ簡単に行くことができないため、
過去4年間、ガザ地区から医学部に進学した人はいません。
そして、西岸のマッラーには病院がたくさんありますが、
ガザの人は、充分な医療を受けられない状態にあります。
ガザ地区の入り口は2箇所。
北のエレツと南のラファのみ。
ガザ地区の唯一の空港は空爆を受けおり、まだ整備されていないので
空から入ることは無理です。
海に面しているので港もありますが、ここも空爆を受けており、
まだ使用できる状態ではありません。
つまり、ガザ地区の全ての境界線をイスラエルにコントロールされていますが、
この1か月は、全く移動できない状態にあります。
パレスチナでは、特に以下の医療サービスが不足しています。
心疾患(カテーテル、バイパス、ペースメーカー)
神経外科、形成、整形、泌尿器、眼科
癌(放射線、化学療法)
多くの先進国と同様、パレスチナでも乳癌患者が増加しています。
しかし、上記の現状のため、イスラエルに比べて、5年生存率が低いのです。
しかも、パレスチナの30歳以下の女性はイスラエルに入国できないという
意味不明な規定があります。
例えば、28歳の乳癌の女性がイスラエルで治療を受けようと、
何十回も検問所に訪れましたが毎回断られました。
検問所で服を脱ぐことを強要されたこともあるそうです。
こういうことが、当たり前のように起きているのです。
ジハードさんとマスキットさんは、
そのような状況下で、患者さんの命を守るために毎日奮闘しています。
「情報を知って、伝えることがとても大切な支援。お金や技術よりも
心の支え合いが一番大切です」
と、口をそろえて言っていました。
グローバリズムが進んでいるといわれている今の世の中。
「グローバリズム」とは、何でしょうか?
様々な技術が発達したおかげで、私たちは日本の裏側の情報を、
すぐに手に入れることができるようになりました。
世界で何が起こっているのか、日本にいながら知ることができるようになりました。
世界中には基本的人権が侵害されてる人々がたくさんいます。
その人たちの心に寄り添い、痛みを分かち合い、どうすれば問題が解決できるのか
一緒に考える。
そうできるようになったことが、
グローバル化の最大の恩恵なのではないでしょうか。
この地球上で起こっていることを一緒に考え、アクションを起こしましょう