ダラシャクラン難民キャンプでテント訪問~マルチシムー二教会クリニックでのIDPに対する医療支援

母子保健活動の継続

アルビル市内にあって、シリア人の難民が生活するダラシャクラン難民キャンプに行ってきました。ダラシャクランは2014年からJIM-NETが妊産婦支援を継続しており、私も看護師として関わらせていただきました。この話は帰国してからじっくりとBlogにアップしようと思いますm(__)m

今回は医師2名がキャンプを訪問するので、私はそのお手伝いと妊婦さんもしくは乳幼児の訪問ができたらと思い、行くことになりました。

人口約8000人のこのキャンプは妊婦は約500人。子供は毎月たくさん生まれています。JIM-NETの看護師リームが妊婦と乳幼児のリストを作成してくれていて、今回はトラブルのある乳児を中心にまわることにしました。

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先天性心疾患の場合

赤ちゃん:シドゥラ 生後8か月 女の子
お母さん:ラワ23歳

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出生時に心臓に雑音があり穴が開いていると言われ、その後あちこちの医師を受診しますが、医師によって見解が異なるため両親は不安の中にいました。また、ダウン症ではないかという指摘もあり、検査をすべきか悩んでいます。もう1つの問題は早産で、8か月たった今も体重の伸びが良くないこと。

診察した心臓外科と循環器の2名の医師によると軽度の心室中隔欠損だろうとのことで、自然閉鎖する可能性が大きい、と。私からは、ちょこっと離乳食のアドバイスをしました。

シドゥラの件を、小児科医のナガム先生に話したところ「アルビルにある国立小児病院に2か月に1回、フランスから心臓外科のチームが来るので、彼らにつないで行きましょう」とのこと。ひとまず、ナガム先生が来週診察してくれることになりました☆彡←ナガム先生とは、今回私たちが支援しているマルチシムー二の医師でご自身が国内避難民です。

水頭症の場合

赤ちゃん:ディタージュ(シマーフ) 生後1年 女の子

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1年たった今でも、ハイハイしたり座ったりができません。以前受診し、CTの結果水頭症であることが判明。しかし治療を受けておらず内服薬のみで経過観察中。うちの医師2名が診察したところ、今のままでは改善されないので、シャントを造るなりした方が良いだろう、と。

ディタージュの件をナガム先生に相談したところ、「髄液のフォーローアップが必要なので国立小児病院の脳外につなぎましょう」と。こちらもまず、ナガム先生が診察してくれることになりました☆彡

こんな風に何人もの医療従事者が命をつないでいくって、心の奥から温かいものがこみ上げてきます。ナガム先生自身、ダーイシュ(IS)に故郷を追われた国内避難民にもかかわらず、他者を思いやれるって、凄いです。

しかし実際この国では医師の信頼度が低く、医師も自分の利益のために患者を抱えてしまい、医師同士が相談し合うことってあまりないようです。ナガム先生は「私はいろんな医者とコンサルしながら進めていきたい」
と言っていました。中央の女性がナガム先生です。

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プロジェクトの概要

プロジェクトの実施団体→日本チェルノブイリ連帯基金(JCF)
活動地→イラク共和国アルビル県アルビル市アインカワ地区
実施期間→2015年2月~7月

背景

イラク国内では、去年の夏から激化したダーイシュ(IS)の迫害によって、ニナワ県モスル等からクルド自治区に約85万人の方々が逃れてきています。彼らは建設中の建物や空き家、学校、広場そして宗教施設等で生活をしています。その内、約5万人のクリスチャンは、クルド自治区のアインカワ地区(クリスチャンの地区)で暮らしています。

そんな中、同じ国内避難民でありクリスチャンの医師らが、マルチムーニ教会にクリニックを設け、診療活動を行っています。去年の7月から1日約500人近くを診察しているクリニックでは、9月から薬品購入の資金が足りず、医療設備も不十分なため、慢性疾患を抱える方々の継続した治療が困難な状況にあります。

JCFが2009年から行ってきたサポートしてきたイラクの小児科医であるリカァ・アルカザイル医師が、去年の7月にご家族とともに長野県松本市に避難してきました。リカァ医師の友人であり親戚でもある小児科医のナガム医師がマルチシムーニ協会のクリニックの立ち上げと継続した運営に関わっているため、今回JCFがクリニックのサポートを実施することになりました。

事業内容

1.初期診療における投薬指導
2.カルテ作成と管理スタッフの育成
3.医療チームの派遣による医療体制構築支援

IDPとは

国内避難民のこと。「難民」とは異なり、自分の国の中で避難している人々をさします。

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